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課題解決思考 vs デザイン思考:2つのアプローチを使いこなし、イノベーションを加速する 2025-10-03

思考法問題解決デザイン思考イノベーション比較

緒言:分析か、共感か。それが問題だ

「課題解決思考」と「デザイン思考」。近年、ビジネスの世界で頻繁に耳にするようになったこれらの思考法は、どちらも複雑な問題を解決し、価値を創造するための強力な武器です。しかし、その哲学とアプローチは、似ているようで大きく異なります。

  • 課題解決思考は、既知の問題を深く掘り下げ、原因を特定し、最適な解決策を導き出す、いわば「分析的な外科医」です。
  • デザイン思考は、ユーザー自身も気づいていない未知のニーズを探り当て、全く新しい価値を創造する、いわば「共感的な探検家」です。

これらは対立するものではなく、むしろ互いを補完し合う関係にあります。本稿では、2つの思考法の違いと共通点を明確にし、それらをいかに使い分けるか、そして組み合わせることで、いかにイノベーションを加速できるかを解説します。

核心的な違い:問題との向き合い方

両者の最も大きな違いは、「問題」をどう捉えるか、その出発点にあります。

課題解決思考 (Problem-Solving Thinking)デザイン思考 (Design Thinking)
出発点明確な問題 (例: 「Webサイトの離脱率が20%増加した」)曖昧な状況や人間 (例: 「ユーザーの読書体験をより豊かにするには?」)
思考の型収束思考 (Convergent Thinking)発散思考 ⇔ 収束思考
主な問い「なぜ問題が起きたのか?」(Why)「ユーザーにとって本当に価値あることは何か?」(What if)
プロセス線形的・構造的 (As-Is/To-Be, 原因分析, 解決策)反復的・循環的 (共感, 定義, 創造, プロトタイプ, テスト)
ゴール問題の根本的解決、最適化新しい機会の発見、イノベーションの創出

課題解決思考が「正しく問題を解く (Solve the problem right)」ことに主眼を置くのに対し、デザイン思考は「解くべき正しい問題を見つける (Find the right problem to solve)」ことから始めます。前者が論理と分析を武器に「答え」を導き出すのに対し、後者は共感と創造を羅針盤に「問い」を探求するのです。

いつ、どちらを使うべきか?

それぞれの思考法には、得意な領域があります。

課題解決思考が有効な場面:

既存のシステムやプロセスを**「改善・最適化」**する場面で絶大な効果を発揮します。

  • 業務プロセスの効率化
  • 製品の品質改善、バグの修正
  • コスト削減計画の策定
  • 目標未達の原因分析と対策

問題の所在が比較的明らかで、データに基づいた論理的な分析が有効な場合に適しています。

デザイン思考が有効な場面:

**「新しい価値を創造」**する、不確実性の高い場面で真価を発揮します。

  • 新規事業・新製品の開発
  • 既存製品のブレークスルーとなるアイデア創出
  • 複雑で、前例のない社会課題への挑戦
  • 顧客体験(CX)の根本的な見直し

何が問題かすら分かっていない、あるいは様々な要因が絡み合う「厄介な問題(Wicked Problem)」に取り組む場合に不可欠です。

最強の組み合わせ:思考のハイブリッドモデル

最も強力なのは、この2つの思考法を対立させるのではなく、一つのプロセスとして統合することです。

  1. 【探索フェーズ】デザイン思考で「解くべき問い」を発見する 市場が成熟し、顧客のニーズが多様化した現代において、多くのビジネスチャンスは顧客自身も気づいていない「潜在ニーズ」に眠っています。まずはデザイン思考の「共感」と「問題定義」のプロセスを用いて、この潜在ニーズを探り当て、本当に解く価値のある「正しい問題」を設定します。

  2. 【実行フェーズ】課題解決思考で「最適な答え」を導き出す 解くべき問題が定義されたら、今度は課題解決思考の出番です。設定された問題を「あるべき姿」と「現状」のギャップとして捉え直し、「なぜなぜ分析」や「ロジックツリー」で真因を徹底的に分析。そして、最も効果的・効率的な解決策を策定し、実行計画に落とし込みます。

デザイン思考が「何を(What)作るべきか」を見つけ、課題解決思考が「どうやって(How)作るか」を最適化する。この連携こそが、現代のイノベーションにおける王道パターンと言えるでしょう。

結論:両利きの思考を身につける

課題解決思考とデザイン思考は、車の両輪のようなものです。片方だけでは、まっすぐ、そして力強く前に進むことはできません。

  • 日々の業務改善では、課題解決思考で効率と精度を高める。
  • 未来の価値創造では、デザイン思考で常識を打ち破る。

そして、最も重要な局面では、2つの思考法を自在に行き来する。この「両利きの思考」を身につけることこそが、変化の激しい時代を生き抜き、継続的に価値を生み出し続けるための、最も確かなスキルなのです。


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