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はじめに:VRヘビーユーザーとしての切実な悩み
皆さん、こんにちは!このサイトの管理人をしているKaibaこと、吉田です。一人のVRヘビーユーザーとして、そして研究者として、私がずっと抱えていた悩み。それは、**「VRは最高に楽しいけど、長時間プレイするとめちゃくちゃ疲れる!」**という、非常に切実な問題です。
この「VR疲れ」や「VR酔い」をなんとかできないか? その一心で、私と研究室の仲間たちで開発した、新しいVR歩行インターフェースについて、今回はご紹介させてください。キーアイデアは、なんと**「アシストスーツ」**です。
これまでのVR歩行:没入感と快適さのジレンマ
ご存知の通り、これまでのVR歩行技術には、大きく分けて2つのタイプがありました。
1. 立って歩く派(立位型)
全方向トレッドミルやその場足踏みなど、身体を動かすことで高い没入感が得られる一方、長時間プレイすると純粋に疲れてしまい、重心も不安定になりがちでした。
2. 座って移動派(着座型)
オフィスチェアでの重心移動などは、体は楽ですが、直感的な操作が難しく、結局VR酔いを起こしやすいという問題がありました。
私たち研究者は、この**「没入感」と「快適さ」のトレードオフ**という大きな壁に、ずっと悩まされてきたのです。
私たちの答え:立っているのに、座っているかのように楽!
「立ってプレイする時の没入感はそのままに、座っている時のように疲れず、安定した姿勢を保てないか?」
この無茶な要求を実現するため、私たちが着目したのが、建設現場などで使われるアシストスーツでした。そして開発したのが、このシステムです。
システムの仕組み
ベースにしたのは、アルケリス社製の「アルケリスFX」というアシストスーツ。これは、中腰になると体重を支えてくれ、まるで空気椅子のように安定した「立位着座姿勢」がとれる優れものです。
このスーツに、膝や腰の動きを捉えるセンサーや、全体を制御する小型コンピュータ(M5Stack)を装着。いわば「歩ける椅子」のようなVRインターフェースへと改造しました。
どうやって動かすの?
操作はとても直感的です。
- 前進・後進: 前の足に体重をかければ前へ、後ろの足に体重をかければ後ろへ。
- 方向転換: 現実と同じように、腰をひねるだけ。
- ジャンプ: スーツに体重を預けた楽な姿勢から、グンと立ち上がることでジャンプ!
この研究のポイントと、私たちが描く未来
この研究の最大のポイントは、アシストスーツという異分野の技術を組み合わせることで、**立位型の「高い没入感」と、着座型の「低疲労・安定性」の“いいとこ取り”**を目指した点にあります。
この技術が発展すれば、私たちのVR体験はもっと豊かになります。
- 一日中VRMMO: 安全かつ疲れ知らずに、仮想世界をどこまでも冒険できる。
- 新しいフィットネス: 下半身への負担を減らしながら、楽しくトレーニングやリハビリができる。
- VR業務の効率化: 工場の遠隔操作や建築レビューなど、プロの現場でのVR活用を加速させる。
おわりに
私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。今後は、このシステムが本当に従来の手法より優れているのかを、客観的な実験で示していく予定です。学会や展示会などでこのデバイスを見かけたら、ぜひ「Kaibaのサイト見ました!」と声をかけて、体験しに来てください!
(本研究は、私、吉田翼らが第30回日本バーチャルリアリティ学会大会で発表した内容に基づいています。)