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自己とタコ 2022

二人で一つのタコアバターを操作し、サメから逃げるVR作品。 自分を見失い、「あなた」と「わたし」という存在が曖昧になる体験。

  • Genre
    Virtual Reality融合身体マルチプレイヤーリズムアクション
  • Platform
    Oculus Quest 2
  • Stack
    UnityPhoton EngineArduinoVirtual Reality
  • Production Time
    2022/03 ~ 2022/12
  • Exhibited Event

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融合身体という分野に焦点を当てた作品。従来の境界線が明確に分かる「分業としての融合身体」ではなく、 「お互いの境界線が曖昧になり、相手の行動が自分の予測範囲に入る、「融け合った融合身体」を実現することがキーコンセプトとして作品設計を行った。
作品開発前のプロトタイピングでは、相手のアバターに身体所有感を感じるためにはどうすべきかを議論し、 最終的にタコという多脚アバターを二人で操作し、アバターの操作部位を入れ替えることで達成できるのではないか、という仮説に行きついた。


開発にあたっては、ソフトウェア面の開発担当として UnityとPhotonを使用したVRコンテンツの開発を行った。 具体的には、融合身体としての体験をデザインする上でタコアバターのIK制御や 二人のアバターを「混ざる」ように制御する部分を実装した。 アバターの制御には紆余曲折あり、当初は突然操作するアバターの部位が変わるだけであったが、時間と共にゆっくりと 操作のウェイトを変更するパターンや体験者の視線に応じて操作ウェイトを設定する方法を実装し、 最終的に三角関数を用いた緩やかなウェイトの遷移を採用した。 またIVRC SeedStageでの体験を経て、視覚的なアバターの融合表現や もう一人の行動に対して予測を立てやすくするためのリズムアクション要素を追加した。


およそ9ヶ月の期間で開発を行ったが、最終的に展示などの短い時間で充分に融合した感覚を生み出すには至らなかった。 これは主題であった「混ざりあう体験」の創出は非常に挑戦的なものであったということも一因であるが、 単純にメンバー各人のスケジュール調整に苦労し、十全に議論やブラッシュアップを行えなかったことが主な原因であった。 振り返りの際には二人で行うタスクの設計が「タコになる」のか「二人が混ざりあう」体験なのか どっちつかずであったこと、元々身体所有感を増幅させるために制作した触手感覚再現デバイスの役割が 最終的には薄まってしまっていたことなどが指摘された。